スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

これからの道徳教育(2)~小川未明の教育観 #道徳

1春を待つ



これからの道徳教育(2)~小川未明の教育観

 この正月NHKの「日本人論」を見て以来、その中で紹介された『イキの構造』『死者の書』『日本的霊性』『中空構造日本の深層』等を読んでいる。(セブンネットショッピングに依頼した河合隼雄「中空構造日本の深層」が届いたのはほぼ1か月後の1月末であった!)
 鈴木大拙の『日本的霊性』によって「妙好人」という人たちがいることを知った。どこでどうつながったのか私の思いは同じ日本海側の童謡詩人・金子みすずに飛び、40歳を過ぎて2年間を学んだ上越・髙田に飛び、林泉寺での座禅体験を思い出し、冬の厳しい寒さの日本海の雁子浜に残された言い伝えを下地にした小川未明の『赤い蝋燭と人魚』に飛んだ。

 昔の教科書には未明の『野ばら』という作品が載っていた。年配の方はご存じだろうか。「大きな国と、それよりはすこし小さな国とが隣り合っていました。当座、その二つの国の間には、なにごとも起こらず平和でありました。」で始まる二人の兵士を通して戦うことの悲惨さを訴えた作品である。未明と言えばこの『野ばら』か日本のアンデルセンと言われるもとにもなった人魚の話『赤い蝋燭と人魚』。後になって古田足日などからその古さを批判はされたが、いわさきちひろが最後の絵本として選んだ作品でもある。今はそんな未明について彼の功績を述べようとは思わないし、それほど多くの作品を読んでいるわけでもない。
 未明について調べている中で読んだ彼の教育論にいたく惹かれたのである。彼の作品のベースにつながるのどうかわからないが、文字通り「人間性のために」と思って読めば、これから学校教育の目指す道徳教育に大きな一石を投じることになる考え方だと思う。そのまま引用する。

未明の教育観
(前略)
 小学校の教育が学術そのものよりも人間の感化にある事は何人も認めている事である。人間の感化とは生徒それ自身の有する各違った個性を成長させることに外ならぬ。今の教育は多くの生徒を一教場の内に集めて、与えられたる教科を教うるようであるが、それでは各個人に就て深い注意を与えて各の個性の開発伸長を計ることは誠に困難な事だ。
 然しそれも教師の心得次第では全く出来ぬ事ではない。ここにして思えば昔の漢学塾など云うものは感化力が偉大であったわけだ。教うる人が人格者である許りでなく、一人一人の生徒を自分の前に置き、熱心に精神的教育を施したために偉大なる感化を与うることが出来たのは、寧ろ当然の事である。今日の小学校の教育殊に修身科の如きものに就て、教師が今までの与えられた処の概念をそのまゝ吹き込むことは何等の役にも立つものではない。例えば今日吾々の間に存在する日常の習慣や礼儀等はどれ程の価値あるものであろうか。試みに小学校の修身書を一瞥してもすぐ分ることであるが、その並べられた題目と、其れに関する概念的な口授式の教授ぶりとが、ほんとうの人間性の結晶と思っては大間違である。今日の習慣なり、風俗なり、礼儀なり、或は又道徳と云ったようなものは、今日の社会組織の約束の下になったものが多く、ほんとうな人間性のそれではないのである。
 由来人間にはその時代に束縛せられず、又階級に拘束されずして、昔も今も人として立って行くべき上に、美くしい事、正しい事の感激がある。たゞその感激の表われが時代によっては違う。とにかくすべての人間は自然の上に対してある感激を有する。この美くしい事、正しい事に対する感激、又は自己犠牲の考こそほんとうの人間を作るに必要なものである。これを子供の心から呼び出して成長させることが一番大切な事である。そしてそれは形の上の教育では到底不可能なことである。
 概念的な教育、束縛的な倫理観が、健全な真実な教育上にどれ程禍しているか分らない。又この頃自由教育云々に就てある知事とある教育者とが争った事があるが、今日に至ってまだ学校教育を政治の上から云為せんとするそれらの人が、どれだけ人間性の発達上又文化の開展上に禍して居るかは、誠に計り知れない。
 恁う考えて来るとそんな強い力、立派な人格を備えた先生と云うものが果してそんなに沢山あるか疑われる。然しそんな先生が沢山なければ多数の幼き国民をどうしよう。この意味から云っても現在の知識階級が尤も眼ざめなくてはならぬ事である。私はこの点に関して特に小学校教師養成機関に就て論じたい事もあるが、今は割愛したい。
 露西亜の現状に於て、外の事はともかく子供の教育上に於ては私は涙ぐましい気がする。大人はどんな苦しみをしても、その子供には不足を感ぜしめないようにし、国家が其の子供を養って行き、善と美とに対して、子供自身の裁断をまつように自由に教育することは、何と云ってもそれは好い教育である。             (後略)小川未明「人間性の深奥に立って」  (「人間性のために」二松堂書店1923(大正12)年2月10日)初版
                           http://www.aozora.gr.jp/より引用

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

加藤 宙

Author:加藤 宙
俳句や短歌,日々の思い等をつぶやきます。絵本を好んで読み、「幸福とは何か」「わかるとは何か」「祈りとは」などについて考えています。日が暮れる頃、美味しい肴で至福の時を迎えます。「塔」短歌会。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。